詩(11)

  夢みる眼



今は 
ぶあつい氷河のクレパスに呑まれるのか 
君は


脱ぎきれない夢の続きのように 
古生竜の巨眼をすべる 
旅人の小さな影のように
落ちる 
青白く反転しながら落ちる 
見果てぬ夢想 
ついに価値なき詩章の鋭い尾ひいて


だが 
明るむ山脈のむこう 
朝風にはためくカーテン
いったい 
そのどちらが現実なのか 
看護婦はそっと君の腕をとり
カンフルを打つ 
その後の優しいベーゼが 
また君を深い眩暈に突き放す


それからは 
見も知らぬ未来の国をぼんやりと歩む君
いつも君の傍により添っている 
長い影にひかされて
君は世界の尾根に立ち上がり 
そこから 
むこうの奈落をのぞきこむ


やはりそこに 
累々たる氷河 
ギンヌンガガップの果てしない裂け目!
そのとき 
眼の存在と化した君の中を 
清冽な水が流れ下る