2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

詩(15)

井 戸 庭の片隅の 昔の井戸を覗くと 少年の頃の私が見える とんぼとりの網は持ってないが 少し痩せた私が 白い歯を見せて笑っている 井戸の中の空は まあるく区切られていて 抜けるように青い空から さあっと あの時分の風が吹いてくる 見てごらん あそこに…

詩(14)

逆 行 長い時の回廊の突き当たり 真っ白い扉を開けると そこは夜の国 凍てつく氷の世界が広がっている 思いださないか 夜の国の駅には 失われた昔の時間が そのまま閉ざされていて 私を出迎えるのは あの頃のおまえと幼い子供たち (やっと帰れたね) (ああ…

詩(13)

記 憶月夜の河原で青い石ひろった どこまでも明るい河原を 水はさらさら流れてた 白い砂の上で青い石みつけた 手のひらにのせると ひんやりと 冷たさが心に沁みた たちまち ずっと昔の記憶が戻ってきた 生まれる前のことが心に浮かび 死を超えて転生する魂の…

詩(12)

蒼 穹 西風が吹く 遠く葦の葉をひるがえし 裏の竹林をきしませ 枝折戸をたたく 青畳の座敷 下帯ひとつの男が眠って 夏の一日 白雲の夢をみる ひねもす鳴くは よしきり 遠くで人の声がして …ふと 風がやむ みじろぐ男の 眼窩に落ちる 山の孤光 天の舵ぎいと回…