2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧

楠若葉(55)

ここは小学校の裏門。私はウオーキングに疲れて、学校の敷地から差し掛けた大きな楠の樹の影に座っている。 さっきから涼しい風が吹いている。と思ったら、誰かが樹をゆすっていた。楠の若葉が揺れ、高い所から子供の顔が出た。赤いほっぺたがふくらんで、は…

死の島(54)

暗い空の下、糸杉の林を囲んで、そそり立つ岩の島。鏡のような水面をすべるように、死者の棺を乗せた一隻の小舟が島の門に近づいていく。神々しい感じもするが、この絵を支配しているのはほとんど絶対に近い静寂の気配である。 スイス生まれのアーノルド、ベ…

水車小屋(53)

ここは、空の滴が山々の生命を運んで集まるところ。その地上の一点にこびり着いたように建てられた小屋が見える。何かを探すようにさまよっていた白く沸き立つ雲の峰が、問いを投げかけた。 ーこの水車小屋に住むのは誰? あれになにか、異なる精神を感じる。…