2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

詩〔幻)

幻ある晴れた日 小高い山に腰をおろして 下の畑を飛んでいくスカーフを見た ーそれは茶畑の上を舞う 白い鳥に過ぎなかったがーその山の上から眺める景色は すべてがうっとりと美しく 非現実的な悲しさを湛えていた ーあのころ 私は世間をむなしく 疎ましいも…

詩(土手)

土手夕暮れの土手を 人が歩いています 川面の照り返しで すこしあかるい 上着の裾を翻しながらー土手の下は 黄色い菜の花でいっぱい なのにその人は その美しい彩りには まるで気付かない風に 長い土手の道を すたすた歩いているのです何か 急ぎの用でもある…

詩〔蟻)

蟻えっさかほい 蟻が一匹 えっさかほい 急な坂道 えっさかほいぴんと張った触角は二本 踏み締める足は前後六本 登るはしから ぱらぱら崩れる砂もなんのそのだけど難儀は 時折落ちるごろた石 やっとのこと 登りつめたと思ったら おっとと転げ落ちたやれやれ …

詩〔空)

空小さな部屋の窓辺で 私は空を見上げています空は吹っ飛んだように しんからりと澄んでいて 穏やかな風が 白いカーテンを揺すります 何もない青空 何もない空虚な部屋 私は今も考えています あなたは どこに行ったのかとたしか あの荘重なハープの調べが 空…