2006-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ぼた山(44)

酒を飲んで、そのまま眠ってしまったらしい。もう一人の男と、肥えた女が二人傍に寝ている。青い蚊帳を通して入ってくる月の光が、男のほうけた黒い顔と、女のはたげた白い腿を照らしている。 窓は開いているが、蚊帳の中は蒸し蒸しして、あちこち身体が痒い…

地図(43)

崖上と崖下の男女は、地図の上では二〜三メートルの距離だが、現実は五十メートルも離れている。これは、片寄った見方による或る錯覚、食い違った心、空想と現実の差などを考えさせるが、同時にわたしと夫との心理的の距離を表している。 わたしは極度の方向…

黒い山羊(夢占い)(42)

三人姉妹がこっちを見てひそひそ話をしながら、二階建ての屋敷に入り、雨戸を閉めてしまった。屋敷の方へ歩いて行こうとすると、道の真中に繋いである黒い山羊が私を通さない。 泉鏡花の作品には、この世には存在し得ないような神秘的で美しい女性が登場する…

すすき(41)

すすきの穂が月夜の原にぼっと浮んでいます。明るい月に誘われたのでしょう。狐の親子が穴から出てきました。後ろ足で立ったお母さん狐と並んで、子狐も立っています。やがて、小狐はすすきの白い穂をひとつふたつと数え始めました。最近お母さんから教わっ…