2011-12-01から1ヶ月間の記事一覧

詩(11)

夢みる眼 今は ぶあつい氷河のクレパスに呑まれるのか 君は 脱ぎきれない夢の続きのように 古生竜の巨眼をすべる 旅人の小さな影のように 落ちる 青白く反転しながら落ちる 見果てぬ夢想 ついに価値なき詩章の鋭い尾ひいて だが 明るむ山脈のむこう 朝風には…

詩(10)

海の時間 風が僕をなぶろうと そっと海から吹いてくる あれはきっと 南海で死んだ兄たちが たしなめようとしているのさと ゆっくり僕は反すうする 太陽が雲間に輝いているので 兄たちの横顔はシルエットでしかないが それでも 日増しに募る思いが 虚無の海を…

詩(9)

彼 最も親しい者 清らかな者 一度も会ったことはないが 僕が生きているこの場所の ちょうど裏側に いつもぴったり寄り添っている 一度も会ったことはないが 深い空間から 絶えず微かな信号で呼びかける 森閑とした夜の街を僕が歩く時 もう一つの同じ街で 彼…

詩(8)

アメリカ・バイソン あいつに出会ったのは 三角形したあるさびれた村 短い首に巻いた赤いタイ 毛むくじゃらの体はみるから獰猛 あいつは道の真ん中で アルコールくさい息を吐きながら眠っていた そのふてぶてしさ! その見事な醜さ! 俺はしばらく息を詰めて…