山風

明るい木立のなかで
ぼくらは出会った
どこかで見たような顔だつた


ーこんにちは
知り合いではないが
ぼくらは声を交わす
すれ違ったとき
互いのリュックがぎいぎいきしんだ


振り返ると
下りて行く赤い帽子が
木立のあいだに見え隠れする
どこかで見たようなあの帽子
ー変装してもすぐ分かる 
あれは昔会ったことのある
サーカスの熊さんー


ごおっと風が吹き
朴の葉が舞い上がる
空高く舞い上がる
飛ばされた赤い帽子を追って
熊さん駆け出した
駆け出した