天上の旋律

楽聖モーツワルトは
その天使の囁きにも似た軽やかな旋律を
どのように紡ぎ出したのだろう
彼はいう
聞こえてくる天上の音楽を
そのまま書き留めただけ


果たして
そのようなことがあるのか
病魔に冒された彼の脳髄に
ふと流れた旋律を
悪魔のものとは思わなかったのか


五歳から三十五歳までの
七百にも及ぶ作曲
交響曲、協奏曲、室内楽曲やオペラ
神童と呼ばれ
父に連れられてのパトロン探し
音楽修行の旅に
迷いはなかったのか


まだ誰も行ったこともない
神の島の花を夢み
小さな蝶が荒海を渡る
そのときから
ミューズの眼は
彼に注がれていたのだろうか