稲妻

見渡すかぎりの視界に
転がっているテレビ
洗濯機や冷蔵庫はては
風に捲れ上がるビニールや新聞紙
この見捨てられた
堆積の中で
君には聞こえないか
あの気違いじみた声を


風に飛ばされた
ぼろ切れのように
空を舞う
数百の黒い烏の声を


この光景の背後には
なにか恐ろしいものがある
その押し殺した沈黙の中に
予言された地上の終りがある


何か動いている
ごみの巨大な山の上に
小さな生き物が
手足は黒く汚れ
すすけた顔をタオルで隠しているが
ーあれは人間だろうか


低く垂れこめた雲間で
稲妻が光って
一瞬振り向いた子供の
顔はなぜか見えず
それは暗いまま
三日月のように欠けている