駅の明かりだろうか
あのあたりの雲が
死んだ鯖の腹のように
白っぽく晒されて浮かんでいるよ
ーいつの日からか
この町は病んでしまった
どっちを見ても
星のまたたきひとつない空で
旋回するヘリが
赤信号を点滅させている
自転車で
買い物に出かけた私は
車輪が回るままに左右に揺れながら
暗い道を帰ってくる
私が帰るべき建物は
動かない空に
触角のようなアンテナを突きだし
黙ったまま
傾いて立っているが
ーそれはもう
懐かしの我が家ではない
青白く染まった空の下
養護ホームの玄関で
看護婦が一人
ゆらりゆらり
こっちを手招いている
あれは私ではなく
この町の病気を呼んでいるのだ