チーコと私の病床日誌(10)

平成26年9月5日、もう秋なのに雨ばかり。東京の代々木公園では、デング熱の感染者が出たそうだ。
9月6日(土)、朝7時半〜9時半、竹生垣の北部分の剪定。南のほうは後日するつもり。なにしろ暑いし、蚊が刺すし、車が通るので、ゆっくりしよう。妻が居る頃は張り合いがあったが、今は何をするにしても億劫だ。
9月7日(日)、10時半、堀端に咲いたジンジャーの花を持って、妻の所へ。妻は他の入居者がいる食堂の机に頭をつけて眠っていた。起こして部屋へ。ジンジャーを花瓶に活ける。生姜の香りが、部屋一杯に広がった。
9月15日、車の中で、ラジオを聴いた。「−さん(山)−じ(寺)」「ポコちゃん、ぴょン子ちゃん」「だいちゃん子守唄」などの言葉遊びが面白い。リズム感があるもの、風刺が効いたもの、ただ面白可笑しいものなど、詩にも成りそううだ。
9月21日、今の私は1本の針だけの時計。片方だけのスリッパ。片方だけの割り箸。血圧164。何もする気になれない。妻の足は曲がったまま、伸ばそうとするが痛がって出来ない。
9月24日(水)、雨、次男から葡萄が届く。今日は一日テレビを見て過ごす。
9月30日、朝9時から10時草取り。毎日3回の食事を考えるのが面倒。妻のことを考えると悲しく、気力が出ない。スーパーの弁当を買ってきて、夕方、酒を少し飲む。
10月1日、朝10時半ホームへ。朝シャワーを使ったようで、顔の色艶がいい。12時帰り際、笑わないのが気になる。夜の夢で、妻が、何か私の中に、ポンと入れて呉れたのはなんだったのか。
10月3日、11時から、五龍神社での敬老会に参加。久しぶりに人と会う。
10月4日(土)、12時半ホームへ。妻と色々話す。妻は、本がどう評価されたか、気になるらしい。「寓話」は、出版社の勧めもあって、200部も刷ったが、まだ半分は残っている。好評だったよ、とは言ったものの、あれは、一般受けするようなものではない。帰りに、12日の外出許可願を出す。
10月5日(日)、朝9時〜11時半、草刈り。まだ、蚊が居る。朝はトースト、昼はコンビニのカレー、夜は、スーパーの握り寿司に焼酎少々。
10月7日(火)、昼過ぎまで、草刈り後シャワーをかかり、自転車で、S君の店へ行く。14日に出版祝とのこと。その後JINへ寄る。
10月8日(水)、11時過ぎ、ホームへ。12日の外出には、唐津に行きたいと言うが、台風になりそう。
10月12日、昼過ぎから、妻を助手席に乗せて、唐津に向かう。時間的には、あまり余裕がないが、小雨模様の中、車を走らせる。妻が元気な頃は、樫の木原湿原を通る山越えで、よく唐津までドライブしたものだ。今日は、雨なので、小城から、厳木の道の駅前から、虹の松原を通って、浜崎の海岸に出た。雨もよいの海を見る。妻は満足したろうか。帰りは、また松原を引き返す。松原は明るくていいね、と妻が言う。相知付近で、携帯に、次男から心配する電話があり、4時40分にホームに帰還する。
10月14日(火)、急に寒くなったが、朝、洗濯と物干し。午後4時から、S君が経営する喫茶(ブラッサンス)で、「寓話」の出版記念会。出席者は少なかったが、楽しい会だった。
10月18日(土)10時半ホームへ。稲荷寿司、松露饅頭。天気が良いので、外で車椅子を押す。駐車場の東側にはクリークと水田。時々、鷺や小鳥が見える。その後、部屋で、マグネタイザーを10分ほど当てる。
10月19日(日)、思えば、妻は、平成21年に一度、8時間にも及ぶ脳腫瘍の開頭手術をしている。その時、もう一つ腫瘍の小さいものが有るとのことだった。医者は問題ないと言っていたが、それが、原因になったのだろう(私自身入院中だったので確かめようもないが)。家に居ると、妻のことばかり考えてしまう。何もかも忘れたいが忘れられない。
10月25日(土)、ホームへ。妻は、昨日三瀬に水汲みに行ったとき買った(おはぎ)を喜んで食べる。妻とはよく、車で山の茶花を採りに出かけたが、湧き水を汲むのは三瀬まで行っていた。昼食後、妹のところへ、知人から貰ったレンコンを持って行く。
10月31日、午後10時、長男と孫のT子が来る。