詩(9)

  彼


最も親しい者
清らかな者


一度も会ったことはないが
僕が生きているこの場所の
ちょうど裏側に
いつもぴったり寄り添っている


一度も会ったことはないが
深い空間から
絶えず微かな信号で呼びかける


森閑とした夜の街を僕が歩く時
もう一つの同じ街で
彼の足音がひびく
彼は僕のつくる影
それとも僕が彼の影?


いつの日か
たそがれの光が空を満たすとき
二人は出会うだろう
河を隔てた場所で
黙って見詰めあうだろう
そのとき
僕はもとの魂を知るだろう
そのとき僕は
もとの自分に帰るだろう


こうして
別れたものが一つになるとき
僕の中の闇は消え
そのときから
心は軽やかに澄みわたるのだ