チーコと私の病床日誌(86)

2月28日(火)3時からホームへ。チーコは私を待っていたようで、御菓子を催促するのは相変わらずだが、今日はその後で、昔、妻が入れたテープを聞きながら、色々話が出来た。家での淋しい暮らしの話をしていると、「何も出来ないけど、家に帰ってきていいね」と訊くので、何もしないでいいよ、体が良くなったら帰っておいで、いつでも待ってるからね。私は思う。これは何度か聞いたチーコの言葉だが、やはり、家での暮らしが懐かしいのか。独りの私に同情しているのだろうか、しかし、何よりも肝心なことは、現実として、立って歩くことが出来ない、一人で自分の始末が出来ないのに、リハビリを嫌がることだ。1時間ほど居て、また来るからねと、介護婦付き添いの「お見送り」で別れる。
3月9日(木)昼過ぎ、郵便局に行き、孫、草太郎の貯金。その後、佐賀城公園の美術館で佐賀北高美術部の展示会へ行き、あとは、S君のブラッセンスへ。
3月10日(金)昨日見残した、多久出身の「池田学」絵画展に行く。絵の前は人の行列。とにかく人が多い。古代遺跡というか、核戦争後の地球と言おうか。樹木に覆われた都会、崩れかかった大仏や岩など、ペンで微細に描いた大作で、中には、虫眼鏡をかざして絵の中の小さな人間を探している人も居る。帰宅後、長男に展示会の資料を送る。
3月11日(土)午前中に、独り暮らしのI君に電話して無事を確認する。ほぼ毎日、病院の妻を見舞っているとのこと。

あせび