詩〔空)

    空

小さな部屋の窓辺で
私は空を見上げています

空は吹っ飛んだように
しんからりと澄んでいて
穏やかな風が
白いカーテンを揺すります

 何もない青空
 何もない空虚な部屋
 私は今も考えています 
 あなたは
 どこに行ったのかと

たしか
あの荘重なハープの調べが
空のきざはしを駆け昇った折に
ちらと後ろ姿を見かけたのですが
あまりに深い藍なので
ついあなたを見失ってしまったのです

 もうあなたは戻っては来ないでしょう
 ここに私ひとりを残して
 あの空の奥処に帰っていったのです

藍色の空の高みで
一羽の白い鳥が
ゆっくりと弧を描いています
もうそろそろ
窓を閉めようと思います

 この何もない小さな部屋にも
 いつか物悲しく
 すえた神
 ただよって来ました