詩(13)

   記 憶

月夜の河原で青い石ひろった 
どこまでも明るい河原を 
水はさらさら流れてた


白い砂の上で青い石みつけた 
手のひらにのせると 
ひんやりと 
冷たさが心に沁みた 
たちまち 
ずっと昔の記憶が戻ってきた 
生まれる前のことが心に浮かび 
死を超えて転生する魂の記憶に
わたしは声をあげて泣いた 


明るい河原だった 
水はどこまでもさらさらと流れてた
そしてなにもかも 
夢の中でのことのようだった 


月が西に傾き夜が明けると
すべての記憶は
朝の光に四散した
ただの石に変わってしまった
あの青い石のように 
わたしもまた 
自分をなくしてしまった


いまでも思いだす
あの明るい夜のこと
河原を歩けば
石は微かにきしみ
忘れたことを思いだそうとするかに
転がっては立ち止まる
陽炎のなか
河の水は遠く
きらめき流れて