詩(14)

  逆 行


長い時の回廊の突き当たり 
真っ白い扉を開けると 
そこは夜の国
凍てつく氷の世界が広がっている 


思いださないか 
夜の国の駅には 
失われた昔の時間が 
そのまま閉ざされていて 
私を出迎えるのは 
あの頃のおまえと幼い子供たち 


(やっと帰れたね)
(ああ待たせたね)


こうして永いこと
なおざりにされた時は甦り
やがて
家族を乗せた橇が 
素晴らしい速度で 
過去の氷河を滑走するのだ 
幼い子らが笑い 
若いおまえが笑う 
北極の空にオーロラが燃え 
星が流れて 


思いださないか 
長い時の回廊の突き当たり 
白い扉を開けると 
そこは過去の国
懐かしいあの頃の歌が
ほら 聞こえてくる