詩(船着場)

いつのまにか
二人だけになっていた
どこか迷路じみた
故郷の田舎


曲がりくねった
あぜ道を辿り
狭い江湖を舟で遡っていくと
岸の葦がさらさらこすれ
おまえは絶えず笑っていた
(あれはいつのことだったか?)


舟着き場につくと
道端に並ぶ黒い影
ー目鼻の欠けた
土地の地蔵が
じっと二人を見詰めていた


(あれはどこだったのか?)
わたしは
いたいけなおまえの手をとり
明るい店の通りを過ぎて
突き当たりの駅で
二枚の切符を買った


まだ若い
あの日
世界は美しく
大気は甘い香りに満ちていた
まだ見ぬ土地へ!
私たちは
旅立とうとしていた


それは
迷路じみたおぼろな故郷
ー遠くで花火が上がっていた