チーコと私の病床日誌(24)

11月19日(木)晴のち曇、1時半ホームへ行くと、昨日、お茶の友達が来たらしい。IさんとTさんが見舞いに来たと、妻が息せき切って話す。介護婦もお弟子さんが来たと言うから間違いないだろう。妻とどんな話をしたのか、聞くまもなくお菓子をねだる。しばらくして、落ち着いてから、明日、三人で家でお茶の練習をすると言う。玄関の畳の間を雑巾で拭いておかねば、と、今にも家に帰るようなことを言う。考えてみれば、それは今日の午前中のことだったのだろう。妻が昨日のことをこんなにはっきりと覚えている筈がない。ココナッツオイルを飲ませ、3時前に大広間のほうに連れて行き、また来るからねと言って別れる。妻は元気で、いつもと変わらない。
11月22日(日)曇。今日は当地区で、自治会費値上げのための住民集会があるとのことだが、近隣の知り合いに聞いたところ、誰も参加せず、総会には、白紙委任状を出した様子。私は、当初参加するつもりで、委任状を出さなかったが、あまり目立つようなことはしたくないので、参加しないことにした。
11月23日(月)昨夜、妻と口論している夢を見た。テーブルを挟んで延々と。それは、恐ろしい地獄を覗き見るような時間だった。結局、私は何も決定的なことは言えず、ただ、黙って妻の言い分を聞くしかなかった。思えば、現実の生活の中でも、妻はわがままで、自分の考えを変えることはあまりなかった。少し異常と思えることでも、自分の主張を通した。これまでの私たちの日常生活は、妻の思いつきや考え方を基本に、続いていた。今、妻が傍にいないということで、私は、日常生活の指針を失くしたような気持ちでいる。