チーコと私の病床日誌(18)

9月29日(火)、晴、朝10時前に,TOTOの社員が来て、トイレを見たが、型式が古く、ゴムのパッキンの部品も品切れのため、修理は不可能とのことで、すぐ帰る。大企業はいい。10時半、近所のE病院で、奥歯のかぶせが終了。あと、熱中症で倒れた時に折れた、前歯の再修理を打診したが、ふふと笑うだけ。まあ、このままでもいいか。
10月1日(木)風雨。11時にS病院の診察と薬。午後1時半から、花とお菓子を持ってホームへ。ちょうど、風呂に入っているとのことで、部屋でしばらく待っていると、管理人のMさんが、車椅子を押して連れてきた。妻は最初、私が分からないようだったが、私と判ると、ぱっと明るい表情になった。でも、最初の言葉は、何か持ってきた?妻は、おはぎや、巻き寿司、メロンなど次々よく食べる。私など全く食欲が無いのに‥。以前、秋の草原で、こっちに向かって手を振っている彼女の写真がある。また、一緒に天山に登ろうね。と言うと、妻も、また登ろうねと言う。だが、寝台の手摺りに掴まらせて、立ち上げようとするが、何度やっても、持ち上がらない。悔しい。大部屋に連れて行き、仲間のおばあさんたちによろしくお願いします、と言って別れたが、まっすぐ家に帰る気にならず、嘉瀬川の堤防に車を止めて、コンビニのおむすびを食べた。ここも、妻とよく来た場所だが、今、長く伸びた草に、強い雨風が吹き付けている。
10月2日(金)晴、朝から洗濯と布団干し。10時半、YプロパンからNさんが来て、水漏れしていたトイレ上部(本体)の取替え(6万円)を済ませる。豆から漉したコーヒーを出す。
10月3日(土)晴、朝から表の笹の切り出し、昼までで終える。
10月5日(月)朝から、昨日洗濯したものを干しているが、曇り。予報では昼から晴れるとのことだが‥、パソコンのゲーム(フリーセル)をしていると、次男から電話。こんどの10〜11日に帰宅するとのこと。
10月6日(火)近頃は、テレビはニュースを見るだけで、後は何もすることがないので、8時過ぎには寝てしまう。昨夜の夢は、桜の木の下で向かい合って座っている武士と奥女中風の女の夢だった。男と女の話はもうあらかた終わったようで、お互い相手の眼を見詰め合っている。女は髪を銀杏返しに結っていて、その胸元からは、えもいわれぬ良い香りが立ち昇り、あたり一帯に漂いはじめ‥‥、その時ふと、桜もこの男女も、一幅の絵の中の景色に過ぎないことに気がついた。