チーコと私の病床日誌(15)

平成27年6月25日(木)、曇、病院の診察を受けてから、森林公園でサンドイッチを食べ、ホームへ引き返す。妻の車椅子を押す介護婦が、「おとうさん、今日は疲れてるみたい」。確かに体がだるい。朝の血圧が低い(123)ためだろうか。部屋で、妻も、私が元気なのか心配していたと言う。この頃は、よく眠れない夜が続いたが、今朝は、9時までぐっすり寝た。心配しないで。と言う。葛饅頭や葡萄を食べ、携帯で一緒の写真を撮って、2時に帰る。
6月28日(日)、久しぶりに晴れたので、生い茂った庭木の剪定を終え、裏の竹林から外側に広がる若竹を切っていく。雨が多いこの時期、竹の根は四方に広がる。放っておくと、大変なことになる。竹林は、出来るだけ小さくしたほうがいい。朝から作業して、3時頃に終え、シャワーを浴びる。
7月3日(金)曇、1時半、アルバムと広島から送ってきた紅葉饅頭を持って、ホームへ。車椅子を押してくれる介護婦も家に、年老いた母がいるという。お菓子を食べた後、携帯で、広島の姉(86歳)に電話する。妻も、はっきりしない声ではあるが、お礼を云っている。アルバムを見せ、日記を書いてもらう。今日はいつもより状態が悪いようだ。
7月4日(土)朝、牛乳とドーナツ2個だけだったので、久しぶりに「ブラッサンス」に行って、昼食に野菜カレーを摂る。ここの料理は、気が利いていて、美味い。煙草が吸えないのが残念だが。
7月5日(日)介護婦に言われた、ゆったりしたズボンをGUで買い、1時、ホームへ。紅葉饅頭を食べてから、県病院へ。売店で、今履いているものと同じ室内シューズを買い、そのまま、帰る。夜、トイレばかり行き、眠れない。
7月6日、曇、目が覚めたら10時。朝食後11時頃から、裏のマンションとの境の笹や雑草を刈り、高垣根を剪定する。4時に終え、米を炊いて夕食。少し腰が重いので、湿布を貼る。
7月9日(木)晴、今日はホームの推進委員会。午前中に自分の診療を済ませていったん家に帰り、花と室内履き、写真のアルバムを持って、1時にホームへ。お菓子類を食べてから、アルバムをめくるが、あまり、関心が無いよう。3時になったので、広間のほうの推進委員会に参加。1時間ほどで終わり、同じ部屋の食堂のほうへ行き、帰るからねと言うと、もう帰る、まだいいでしょうもんと手を離さない。可哀そうでもあり、別れ際の切ない気持ちで涙が出る。こんなことが続くなら、いっそ憎まれたほうが気が楽だと思う。
7月12日(日)4時過ぎ、このところ、音沙汰がないので、気になっていた妹の所へ行ってみる。自分も気にしていた由、喜んでくれ、漬物など色々貰う。
7月21日(火)午前中、友人のI君に電話。奥さんは、トイレは自分で行けるが、殆ど寝たきりの状態とのこと。午後、S君の店(喫茶)に行く。
7月23日(木)、10時半、S病院で受診、血圧と前立腺の薬を受け取り、コンビニで昼食。少し森林公園を歩いてから、12時過ぎにS病院の裏のホームへ引き返す。妻は、朝シャワーにかかったとかで、色艶もいい。お菓子の後、「チーコと私の病床日誌」の(1)の部分を読んで聞かせる。自分のことなので、興味を持って、時に、そんなことがあったのかと、恥ずかしそうに笑っている。まだ、頭ははっきりしているので、安心だ。
7月28日(火)、曇、朝9時から、玄関前の芝生を刈り、伸びた竹生垣の手入れ。暑い日差しが照り付けない時にしないと、する機会がない。熱中症にならないよう、気を付けて、1時すぎまで作業したが、それでも、長袖のシャツは汗でびしょぬれになった。シャワーを浴びて、クーラーを入れ、昼食を採り、テレビをみていると、妹から、これから行くとの電話があった。妹は、もう78だが、い色々保存が利く食べ物を持って来てくれた。有難い。
7月30日(木)、1時前にホームへ。妻は食堂の机の前に座っていて、私が傍に行くと、今日は、何か用事だった?と訊く。いつも、私の姿を見るや、懸命に手招きするのに、今日は違う。何言ってるね、見舞いに来たんだよ。部屋に連れていくと、何か持ってきたかと、食べ物の催促。その後はいつもと一緒。もう大分ここの暮らしに溶けこんでいるのかな?
8月6日(木)連日35度の猛暑。午前中に診察、薬を貰い、コンビニでサンドイッチを買っていったん家に帰る。1時からホームへ。妻は、相変わらず詰め込むようにO家からのどら焼きを食べる。気分が落ち着くようにと、金子みすずのCDを掛ける。その後、ボランティアで、妻が、盲人用に入れたテープを聴く。早くて良く分からない、と妻が言う。これを入れる時は大変だった。少しでも音を立てると、怒ったねと言うと、また、最初からやり直さなければならないからねと妻が返す。当時のことを思い出したのか、大石さんやNさんどうしているだろう、言う。(大石さんは盲人のフアン、Nさんは点字図書館でのボランティア仲間)。
8月9日(日)一人家に居るとよく、コールセンターから電話がかかって来る。大半はインターネットの切り替え関係だが、株式や物を買えという電話もある。いちいち聞いていたら、際限がないので、忙しいからと切っているが、間違い電話も結構多い。前置きなしに、OOちゃんね、と言うから、電話番号違いますよというと、あら、済みませんと言って切る年寄りの電話はまだいいほうだ。なかには、そのまま、無言で切ってしまう相手もいる。
8月13日(木)、曇、時に晴、これまで、長男や次男が、熱中症を心配して電話してきていたが、たまにはこちらからと、12時半、次男に電話。もう大分気温も下がったからと安心させる。1時半ホームへ。妻に、三瀬のおはぎとメロンをあげる。食べ終わると、妻は頭を前に下げて、眠るようなしぐさをする。食堂では、いつも、机に頭を付けて眠っているのだろうか。みんなと、わあわあ言っているよと言うが‥‥。私からは、家での暮らしなど、色々な話をする。立って歩けたら帰れるのにと言うと、歩いてるよ、と嘘を言う。それならと、ベットの枠につかまらせて立たせるが、すぐに座ってしまう。
8月14日(金)。表の生垣の笹が伸びているのが気に懸かっていたが、今日は曇りのようなので、ざっと剪定する。気温は32度位だろうか。暑い。長袖のシャツを脱ぎ、Tシャツで、熱中症にならぬよう、お茶を飲み飲みする。3時頃終わって上がり、シャワーにかかり、昨日買っておいた弁当を食べる。6時からの首相談話をテレビで見る。そうか、今日からお盆だった。