詩(かもめ)

  かもめ


喫水線を舞い降りる 
鳥の群れを 
たえず洗い続けてきた 
柔波の
ふくらむ確信にちかく 
あれらは実体から 
時間の壁をつきすすむ灰色の影なのだ


海鳴りのこだまの間に 
刻まれた陰画 
飛翼の軌跡 
夕陽の残痕 
その中に
かすかに震えるひびきを聴く 
遠いものの幻影を見る


軌跡の日々は変わらず 
打ちひしがれず 
すでに逞しく 
雄々しきもの
いのちの惰力賭ける 
運命の海渦


たちまちつばさ百尋の水底にゆらぎ 
ちぎれたマスト風に漂う 
無辺の海
悠久の椀


ここに青春が転がって 
俺もころがって 
幾年 
あの遠い空を詩が流れていく