詩(工場)

   工 場     


草の茂った丘を
のぼって行くと 
下の作業場の
窓から見上げる娘と 
目が合った

娘の両わきで 
若い二人の男が 
くすりと笑う 

(あれはただの幻覚だったのか)
木洩れ陽がゆれて
さっと風が過ぎると
人影が消え
もう窓には誰も居ない

昔からそこにある 
小さな工場
朽ちた板ぶき屋根には 
平らな石が乗って
草がまばらに生えている

誰も居ない窓は
ぽっかりと開いたまま
時間のわなにからまる 
かずらの白い花
方形の闇に
さわさわ揺れて