花 火
花火があがると
口の中が明るくなる
娘は浴衣で
男の暗いシルエットに触る
広場の片隅でしゃくった金魚
その眼は大きかった
黙っているとふくれだし
ものを言えば沈んだ
家へ帰った娘は
ひとりじっとしゃがんでいる
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夕 暮
夕暮れのなかで
沢山の人の後ろ姿が重なっていた
いったいみんな何を見ているんだろう
後ろから覗き込もうとした私を
ひとりが振り向いた
なにかあったんですかと尋ねる私を
みんながばらばらと振り返った
みんな急に真面目な目つきで
私をじっと見詰めた
敵意のこもった視線に射すくめられた私は
その時はじめて
彼らが人間でないことに気づいた