詩(6)

  花 火


花火があがると 
口の中が明るくなる 
娘は浴衣で 
男の暗いシルエットに触る


広場の片隅でしゃくった金魚 
その眼は大きかった
黙っているとふくれだし 
ものを言えば沈んだ


家へ帰った娘は 
ひとりじっとしゃがんでいる



                                                                                                                                                              • -

 


 夕 暮


夕暮れのなかで 
沢山の人の後ろ姿が重なっていた


いったいみんな何を見ているんだろう
後ろから覗き込もうとした私を 
ひとりが振り向いた


なにかあったんですかと尋ねる私を 
みんながばらばらと振り返った
みんな急に真面目な目つきで 
私をじっと見詰めた


敵意のこもった視線に射すくめられた私は 
その時はじめて
彼らが人間でないことに気づいた