詩(4)

  
  小さな影


庭の木に 
白いものがかかっている


春の朝 
眺めている遠方の空から 
おおい おおい 
死んだ妹が呼んでいる


 白い雲が下の方に垂れ下がって 
 その下から歩いてくる
 小さな影が呼んでいるのだ


私は黙ったまま 
机に頬杖をついてその声を聞いている



  井 戸

庭の片隅の 
昔の井戸を覗くと 
少年の頃の私が見える
とんぼとりの網は持ってないが 
少し痩せた私が 
白い歯を見せて笑っている


井戸の中の空は 
まあるく区切られていて
抜けるように青い空から 
さあっと 
あの時分の風が吹いてくる


見てごらん 
あそこにあなたも映っている
井戸の中の青空で 
あなたが笑っている