奇妙な神様(7)

「おい、おまえは洗いは食わないのか」
「いや、おれはこの鯉こくが好きなんだ」
「味噌は血圧が上がるぞ」
 今日は年に一度の高校の同窓会。われわれ三人は川上の料亭で鯉料理を肴に酒を飲んでいる。初夏の暑い陽射しが収まって、下の川から涼しい風が吹いてくる。
「ふう、いい眺めだ」
 谷川の向こうは竹山になっていて、竹の葉が風でふらふら揺れている。それを見ていると、なんだか眠くなりそうだ。
「なんだ、あれは」
 井川が、突然身を乗り出して囁く。
 見ると、山の上の空を色とりどりのあわ粒のようなものが、流れている。
「誰かが、シャボン玉でも飛ばしているんだろう」 
 ビールの泡をなめながら山下が無責任なことを言う。
「いや、あれは風船だ。なにかのお祝いさ」
 と井川は断定する。
「どうでもいいよ。おれは酔ってきたぞ」  わたしは座ぶとんを枕に横になった‥‥。

 目の前に、紙でできた白い舟がふわりと浮いている。それに井川と山下が乗っていて、私を引っ張り上げた。
 舟は窓から外に出て、川を越え、家を越えて飛んで行く。下の方に墓地が見える。(ああ、おれは死んで墓に納められるんだ)と思ううち、舟は石塔の前に着いた。
 石塔の後から、烏帽子を冠った小さな神様が現れて、竹の花筒の中に潜り込んだ。井川がそれを引っ張り出すと、それは吸管の長い二枚貝の「うみたけ」だ。

「おい、起きろよ。うみたけの刺身だぞ」「うまい、このしゃきしゃき感がなんとも」
 井川と山下はまだ飲んでいる。